ショパン200年の肖像@石橋美術館

去年、角野隼斗というピアニストを知ってから、弾くことだけではなく演奏家や作曲家に関して以前より興味を持つようになった。何が何でも行きたいと思う程ではなかったけれど、カレンダーにショパン展の開催期間をメモしていたら、気を利かせて旦那さんが連れて行ってくれた。

中学生の頃の私はロマンチックな気分でショパンを好きだったような気もする。けれど、それはショパンの事をほぼ知らず「別れの曲」と「子犬のワルツ」程度を聴いて知って、そしてショパンが詩人に例えられることから、勝手にイメージしたショパンだった。中村紘子さんがショパンコンクールで入賞されたことも、ショパンを特に好ましく思わせたと思う。

この頃は、歳の所為か、時代の所為か、はたまた性格の所為か、「子犬のワルツ」は全く好きではないし、「別れの曲」は相変わらず好きだけれど、弾きたいと思うまでに至らない。そんな具合で特別に思い入れのあるショパンではなかったけれど、今回展覧会に行って多くを知って、ショパンについてのイメージが変わってしまった。一寸病弱な人くらいにしか思っていなかったショパンがこんなにも情熱的な人だったとは!・・・

今回の展覧会で一番見て見たかったのは勿論自筆の楽譜。人の書く(描く)ものに惹かれる私は、筆の圧や速さに、その人の動きや性格を勝手に想像する。

ショパンの自筆の楽譜は想像していたより随分小さかった。 今よりも紙は大切にされただろうし、守られた環境下であれば、静かな環境下であれば、豪語せずとも大丈夫なのであれば、普通に書けば小さめになったかもしれない。思考を散らばらせないようにするにもそれはいい。ショパンは随分と小柄だったのも、影響があるかもしれない。(因みにすべて私は逆^^;)

楽譜の中の音符たちはとても可愛くて?まるで絵画のようで、すこしミロのコンポジションを想わせる感じ。普通はイメージをデッサンして下書きして本稿の手順になるらしいけれど、ショパンはイメージをデッサンしたら、いきなり本稿を書いていったらしい。何度も下書きして本稿を仕上げるより、一発で短時間で書き下ろした方が、多分捉えた気分伝わりやすい(伝えやすい)のだろうと思う。とはいえ、頭の中にはかなりの分量で濃淡と強弱とetc.色んな要素が精度よくバラエティに且つ纏められて描かれているだろうから、半端な事じゃないと思う。自筆譜は所蔵するフリデリク・ショパン博物館でも公開が限られている貴重なものだったそう。ありがたし。

ショパンといえば、ジョルジュ・サンド。致命的というか、運命的な出逢い。ショパンの人生になくてはならない人。もう、ショパンのようなタイプの人は、どうしようとも惹かれてしまう人だろうと思う。より素晴らしい才能を持つ異性に惹かれるのは当たり前。より強い個性を持つ異性に、情は湧いてしまうもの。激情×激情の劇場が芸術を生んでゆくのでしょう。

ドラクロアが同時代の人で、交流があったというのは知らなかった。思い出してみるにドラクロアが描いた(と記憶してなかったけど、以前絵を見たのは何となく記憶している)ショパン肖像画を見たとき、これってショパン?って思ってスルーした気がするけれど、今回ショパンの生涯を辿ってみると、あのドラクロアが描いたショパンの肖像も、ショパンの一面だなぁと、以前より心を入れてみることができた。

ショパンのご両親の写真などもあり、興味深く解説を読んだ。他にも、ショパンコンクールで採用されているポスターの展示があって、どれもオシャレで秀逸で、デザインがどれも全く味わいが違うけれど、どれもとても素敵だった。ポーランドは、きっと他国に比べて、ハイテク第一(主義)ではなく、人間第一(主義)。

展示の最後の方に、ショパンの真鍮製(‽)のデスマスクがあった。意外と小さくみえた。その顔は、一般的に一番なじみがあって?よく表紙に使われているアリ・シェフェールの描いたショパン肖像画より、ワルシャワの国立ショパン研究所が運営するレーベル「NIFC」が制作したCDに使われていた肖像画の方が似ていた。死の床で呼び鈴用に使っていたというビリケンの姿をした鈴の展示もあった。これを握って鳴らしていたのかと思うと何とも言い難し。

結局今回も館内に3時間位いて、旦那さんを散々待たせてしまった。相方アッシー殿、ごめんなさい&ありがとう。

因みに、旦那さんは待ちくたびれた間に輸入盤CDを買っていて、それを帰りの車で聴いたら、すばらしく良くて、これがショパンなんだ!と感動、感激した。プレイエルって何?って角野さんの記事を読んでいて思ったことがあったけれど、ショパンの時代のピアノのことだったことが判明。ショパンは、このプレイエルで弾かれた盤を是非に聴いてほしい。よりショパンが生きた時代と、ショパンのピアノが解ると思う。

頭の中が納まらないくらいのショパン展だった。また気が向いたら編集で書きたそうと思う。嗚呼~面白かった・・・。

20年ぶり位に行った石橋美術館だったけれど、こんなに素敵な庭園があったっけ?と思う位、お庭がとても素敵で、ビオラ、デージールピナス、ストックetc.色とりどりのお花が植えられていた。きっと薔薇の花の咲くころは見事だろうと思う。家から車で3時間かかるので少し遠いけれど、また今度はゆっくり庭園内のカフェでお茶できるくらいゆっくり見てみたい。

 

追記)

会期2月1日~3月22日までが新型コロナウイルスの影響で3月14日から休館になりました。

見に行けていて良かった。。。でも見ることができなくなった人の事を考えると残念。

https://chopin-exhibition.jp/