木々から放たれる蜂蜜のような香り

夜放たれる香り、その夜の香りは何処からやってくるのだろう?
一昨日、残照の夕刻にもそうであったけれど、深夜に松等の針葉樹から放たれる香りが、いつもは感じさせない辺りを漂う空気の事を思わせるほど、濃く香ってきた。
昨夜もまた深夜12時を過ぎて外にでてみると、蜂蜜の香りとまがうほどの甘い香りがした。
北東から昇った北斗七星を眺めつつ、その甘い香りを鼻先から深く何度も吸い込んだ。

今日も子の刻を過ぎて外にでた。星はなかった。そして肩透かしをくらう程、木々の香りはなかった。同じ春を前にした肌寒い夜なのに、見えないけれど、昨日と同じ空気がそこにはあるはずなのに、昨日とは違う。

ふと、夜の天気予報で明日は雨だと言っていたことを思い出す。
近くにいる木々たちは、既に遠い天気のことを知っている。