毛虫の引越し

毎年、玄関先の松の木に新芽が伸びる頃、毛虫が現れる。はじめは体長数ミリ程度だけど、6月頃になると体長は大きいものは9cm位、胴回りφも1cm位になる。

食べ物も生き物も、大概のものは嫌わずにおれるつもりだけれど、また嫌わずにいたいと思うけれど、大きい毛虫は、いけない。大きい蝶々や蛾もいけない。

毛虫さんに関しては、先方はそこにいるだけで、危害を加える訳でもなんでもないのに、こちら側としては、いつも怖くて、なるべく近づかないようにしていた。
この時期、みどりつみ(松の新芽を折る)といいのだけれどと思いつつ、沢山の毛虫の皆さんは大きく成長しておられ、近づけず。時々目には入っていたけれど、怖いこともあり無視していた。

先日、お友達のきれいなお姉さんに毛虫の話をしたら、このお姉さんは私が超苦手とする緑と黒のストライプを持つ蝶々の幼虫を美しいと言っていた。蝶々の幼虫を美しいというこのお姉さんの感性は私にはいつも独特である。きっと、このお姉さんは、私の目の届かないところにある美しいものを知っていて、きっとそれらをいつも静かによく観察しているのだろうと思う。
怖いという感情は、何処から来るかといえば、よく解らない、知らない、ということが起因となっていることが多いと聞く。それゆえか、お化けも毛虫も得体が知れずよく解らないから怖い。

思えば、はらぺこあおむし君の絵本だって、あれだけ売れているということは、あおむしを観察し美しいと感じる人は世にそれなりにいるのだろう。

いつもは近づくことはないけれど、今まで遭遇したことのない距離にまで息を殺して接近してみた。そして暫く静かに見てみた。
よく見るとその色の美しさと言ったら、驚くほどで、銀色と黒のストライプのような柄。部分的にはロイヤルブルーを思わせる深く鮮やかなブルーの色も持っていた。大きい毛虫になると、オレンジ色がプラスされて、ライオンを思わせる美しさ。頭の周りのは長い毛がフワフワしていて、ちょっと可愛かった。接触したら痛そうだなぁと思っていた毛虫の毛も、よく見ると結構柔らかそうだった。

少しなれたので、息をゆっくりとしながら観察をつづけると、毛虫さん達お食事をはじめた。沢山ある手?足?の頭側から4本を使って松の針を持ち、お口でその細い針の皮を剥いて、その後、針の天辺からモクモク食べていた。無垢な赤ちゃんみたいな可愛さがあった。

剪定されずに混みこみになった松の葉を食べている毛虫さん。もしかして、剪定しないから松の葉が密集しすぎないように、食べてくれていたのかもしれない。そう思うと、なんとも自然は不思議である。日頃は気づかない協力関係というものが自然の中には働いているのかもしれないと思う。

しかし、余りにも大きくなった沢山の毛虫たち。松の新芽も取りたかったので、申し訳なくおもいつつも、毛虫の皆さんにはお引越ししてもらうことにした。火バサミ(トングー)と紙袋を持ってハシゴに上る。今までは嫌いで1.5m以内に近づくことはほぼ無かったけれど、よくみてキレイだったり可愛かったことが解ったので、少し安心して、松葉をあらかじめ入れておいた紙袋へつまんで取っては入れた。紙袋に入った毛虫はズシッと重かった。次々紙袋に入って頂き、多分20匹以上(30匹弱?)の皆さんにお引越しして頂く事にした。

紙袋を車に乗せ家から十数キロのテクノパークの雑木林に連れて行った。松の木を探して、毛虫を葉っぱに乗せる。移転完了。
申し訳ないけど、引越し先で成長してね。無事にその場で育ってね。(帰ってこなくていいぞ〜・笑)