フジコ・ヘミング@宇部渡辺翁

偶々情報を得る事ができ、一度聴いてみたかったフジコさんの演奏を聴くことができた。

宇部渡辺翁記念会館のステージに多分自身お手製のリメークであろうブルーと白の絹地の着物でフジコさんは出て来られた。

ステージに向って左側の割と前の席だったので、手の動きがとてもよくみえた。無理なく運ばれていく指から現れてくる音色はとても豊かだった。

フジコさんの音は共振、倍音が多いのだろうなと想像する。手元で鳴らされる音は、ガムランボールを想わせるような音がしていた。高音は少し硬く響きに欠けるような気がしたけれど、多分、まるで音が聞こえてない所為なのだろうと想う。

最後の曲は「ラ・カンパネラ」だった。私は「ラ・カンパネラ」はフジコさんの弾かれるものが一番好き。長い歴史の中で、其々の時々に鳴らされてきたであろう教会の鐘。その鐘が鳴り響いている風景が目に浮かぶ。きっと毎回フジコさんは最後に「ラ・カンパネラ」を弾かれているのだと思う。それはきっと、彼女の「祈り」なのだと思う。

アンコールにバッハのアリアを弾かれた。それは、聴衆に向ってのものでもなく、本人の為にでもなく、「唯」弾かれていた。死に行く前の人のような境地さえ感じられた。

購入して帰ったCDに「葬送の曲」が入っていた。正直、驚いたというか、参った。私のお葬式の時には、このCDに入っている「葬送の曲」をかけて貰おうかと思う。