バンドネオンは悪魔の楽器

行くつもりはなかったのに、イブに偶々ラジオで悪魔の音を聴いたのが良かったのか悪かったのか、引き金をひかれてしまった。片道86km、車で約2時間。

周東パストラルホールの座席数500で埋まり具合は8割位?。両サイドの大きなスピーカー以外にも、3つ置かれた正12面体?(全方向に音が広がる)のスピーカー。

最前列の脇のスピーカーの真ん前の席は意外にもいい。ギターのレオナルド・ブラボさんがこのホールはとても音響がいいと言われていたし、どの席もいい音で聴けたのかもしれないけど。小松亮太氏も音の鳴り方が自然だとの弁。

小松亮太氏は知り合いの絵描きの慎ちゃんに似ていた。

キュィンキュィンと、楽器の脇を指で滑らせて摩擦で起こす音を聴くやいなや、キューンと心を持って行かれた。

演奏が始まると、細かく少し痛いような鳥肌が立つ。今までCDでは聴き取れなかった音の広がり方、音色の豊かさ華やかさ、生演奏ならではの音の伝わりを、耳が、皮膚が、聴く。

バンドネオンは1台なのに2台分の音が聴こえてくる時があった。左右でボタンの音色が違うらしい。

空間に通って行く一本の細いパイプのような音、ねじれたような音、ビックリ箱を開けたような音の広がり方etc.

曲はそれぞれの解釈の仕方(アレンジ)によって、まるで違う新たな魅力の曲になる。明確でぶれないしっかりとしたオリジナルの譜面があるからこそ、同じ曲か?って思うほどアレンジに幅をもたせることができるらしい。

今まで出逢った人の中で一番白く、光って見えた手。陶酔してるようで聴いている表情。握手は腕に抱いた赤子のような感触。きっと静かに淡く青白い炎が揺らめいている。

ギターのレオナルド・ブラボさんが大切にしているフォルクローレピアソラは勿論よいが、アニバル・トロイロという人(ピアソラの師)の曲もよかった。

帰りの車を運転しながら、スピーカの真ん前で音を浴び続けた所為か、それとも外の粉雪の所為なのか、頭が妙にクリアだった。脳波が下がるような、脳の基底部辺りが沈んでクリアになっていくような(←なに解らんこと書いてんだか?)、、、今までになったことのないような状態と味わったことのない気分になっていた。

バンドネオンって誰が作ったんだろう?とずっと思って来た。調べるとバンドネオンはドイツの楽器商のバンドさん(短命だったのね)という人が発明したものであるよし。最初はリード楽器を作っていた会社の職人さんがそれぞれ楽器をかけ合わせたり試行錯誤して改良改造されていった様子。でも最終的なその形や音や鳴らし方はやはり悪魔が導いた?

左右のボタンはそれぞれ33(低音)38(高音)で音の配置はバラバラ。音域は5オクターブもある。ディアトニックバンドネオンっていうのは蛇腹をひいた時と押す時では同じボタンで違う音が出る(←悪魔・笑)。蛇腹の所は紙でできているらしい。蛇腹が膨らんでしぼんで、呼吸して生まれる音は、技術によって絶妙な音になって出ていく。

バンドネオンは、悪魔の楽器と呼ばれる。

私は悪魔が好きなのだとわかった。

天使になりたかった気もするのに、実際に私がなりたかったのは悪魔だったのかもしれない。天使に手をひいてもらって、天使に助けてもらいたいと思って、私も天使のようになると思っていたのに、現実は、正確で明確な悪魔に心奪われ、魅せられ、生きていく。

クリスマスにプレゼントされたもの=脳の基底部に澄んだ悪魔の愛/心?  


ウィキペディアより
ハインリヒ・バンド(Heinrich Band、1821年4月4日 - 1860年12月2日)は、バンドネオンの発明者。オランダとの国境に近いドイツのクレーフェルトに生まれた。
1820年代の終わりにウィーンで発明されたアコーディオンに続き、ドイツで1834年にキーが鍵盤ではなくボタン式のコンサーティーナという楽器が開発される。その後ハインリヒ・バンドはコンサーティーナの音域を広げ改良し、1847年にバンドネオンを発明した。

小松亮太氏のインタビュー〜http://beatjam.justsystem.co.jp/app/static/column/gakki/intv/intv_001_01.html

●2011年1月2日は〜甦る北斎 幻の海〜伝説の傑作10図をパリで発見!完全復刻〜(NHK総合22:10〜23:00)楽曲提供/小松亮太