あの日と同じ匂いの夏至

十六年前の今日は大安吉日で夏至だった。仕事の帰りに絵を描く事が趣味の3人で最終日の個展へ足を運んだ。印象的な日だったので、夏至が近付くと、この季節の湿度と木々の濃い匂いと共にあの日の事を想い出す。

個展の会場で人間技とは思えない作品群と出逢った。田舎の会場に信じられないようなが作品が並んでいて、思わず声を上げてしまった。すると静かな会場に声が響いてしまって、会場に後から入ってこられた福田百合子先生(前中也記念館館長)に「まぁ、。」と一寸睨まれてしまった(苦笑)。

静かでしっとりとした佇まいの大きな日本家屋(アトリエ)。玄関で軽く会釈された人の挨拶が、まるで知った人にする挨拶みたいで妙な気がした。そして、その後またその場所で有難い出来事に遭遇し、結局分不相応にもそこで絵を習う事になった。時には芸大の大学院生が習うようなことまで指導があり、暫くの間かなり古典的な事も含めて絵の勉強をさせてもらえた。

今年また、あの時の匂いを想い出している。記憶の何処かが戻って行くような気分。絵を習う事を止めてからもう7年半。私の何処かが何かの気配のようなものを感じている。あの時と同じではないけれど、あの時と同じ。そして、あの時と同じだけれど、あの時と同じではない。古いものと融合した新たな道を、私なりにはじめようとしているのだろうか?そうだといいけれど。