姫リンゴ

 お隣のおばあちゃんの実家がゴミ出しに行く途中にあって、そこには以前大きな姫リンゴの木があった。樹齢が何年だかわからないけれど、薄いピンクの花を咲かせる時は、そこを通るのが私の小さな楽しみの1つになっていた。花を終えた後は沢山の姫リンゴを実らせて、いつかその姫リンゴを分けて貰って実生で育ててみたいなと思っていた。

 5,6年前だったろうか?ある日その姫リンゴのある路地を通っていたら、その木が根元からバッサリ切られていた。残念で、そのショックは長いこと続いた。その数ヵ月後、お隣のおばあちゃんから、そのお宅で一人住まわれていた肢体不自由のおじさんが亡くなられたと聴いた。

 数日前からその姫リンゴの木があったお宅が取り壊されていて、何本もわき芽を伸ばしていた姫リンゴの木も今日はなくなっていた。

 あらたに作りたかった姫リンゴストーリーも妄想のまま、終わってしまいました。