馬場良治先生個展@クリエイティブスペース赤れんが

すごかった。
まだ私が生徒として地神舎(アトリエ)に通っていた頃だと思うからもう十数年前のことだけれど、初めて馬場先生の墨絵の大作をみた。何も塗らない部分で積る雪が表現されていた。今までに出会ったことのない様なリアルさをもつ墨絵だった。静かにたまげて、その絵の前の近くに行ってみたり遠くに離れて見たりした。近くで見れば単なるモザイクのようなのに離れてみると超リアル。不思議だった。なんでこうなるの?

その絵をまた見たいと心の片隅で願っていたら、今回の展覧会に展示がありました。(写真は許可を得て撮らせてもらいました。)
  


日本の自然、四季のうつりかわり=「一 とき 瞬」





「紙」は表現するものに大きな影響を与えるものだと思います。そして「墨」。この墨もそれを生かせる能力を持った人が扱えば、無限に濃淡を作ることができ、色のある絵の具(岩絵の具や油絵の具)よりも更に微細な表現を可能にするものだと思います。それらを扱える知識と、抜群の技術力。多くの国宝や重要文化財の保存修復を手がけてこられている先生の作品は、私的な意見ですけれど、時間を経て行った時、重文や国宝になってもおかしくないと思っています。

この絵をみた後で、なんとなく長谷川等伯の松林図屏風を思い出しました。同じように思いだした人もあるのでは?と思います。知らない人の為に書いておくと、長谷川等伯は息子を失った後、あの松林図屏風を描きました。

個展が始まったのが3月11日。ホルンフェルスは親しくしてもらった女性が亡くなられた場所だったこと等もあり、個人的には諸々の多くの想いが打ち寄せてきました。

因みに、主催の方(?NPO法人こどもステーション山口)に訊いたところによると、この企画は去年の夏ごろにこどもステーション山口の方が馬場先生に打診され決まったそうで、ホルンフェルスの大作は先生が場所のサイズ等を見て、年を明けてから描かれたそうです。「赤れんが」での展覧会用に描かれた作品であるので、先生はホルンフェルスの絵を今のところ他に出品する気がないらしいですよ(ほかでみる事ができる可能性は低い)とも主催の方が仰っていました。

「どうやってあの絵が描いてあるのか(描かれたのか)解らない。」と友人が言ってました。私も下書きの鉛筆書きを探してみたりもしたけれど、まったく見当たらず、どうやってあの大作を描かれたのか解りません。。。馬場先生のお話によると、一日15時間×20日間で描かれたそうです。一ヶ月もかけずにあの絵が出来上がったということになります。

あの海原が、波の音が、先生の中に広がっている。あれだけのサイズ(12枚の襖が横に並んでいると想像して下さい)の海を捉えて、その瞬間が表現されている。凄いなと思います。

ホルンフェルスを描かれた大作は胡粉が使ってあったようだけれど、貝殻胡粉だったのか、鉛白だったのか、ちょっと気になります。先生に訊いてみたかったな。