今日もまたMさん家へ

Mさんから電話をもらう。電話がかかるのはいつも夜の8時半〜9時頃。
「その後、どうですか?」とMさん。
「相変わらずです。あ、でも九州にちょっぴり旅にでておりました」と私。
「毛糸がまた出てきたので、いつか取りに寄って下さい」
「そうですか。じゃぁ、明日は如何ですか?あした寄りますね。。」

少しずつ片づけをしては、時々私に連絡をしてきて下さるMさん。毛糸は以前も貰って「編むのかいなぁ」と思いつつまた貰ってしまう。久保田カヨ子さんを見習って帽子でも編むかな。Mさん(奥さん)が裏千家池坊の師範の免許を持っておられ、晩年は英語とお習字の勉強をされていたのは知っていたけれど、編み物も師範クラスで、毛糸でコートなども姪っ子さん達に編んであげておられたそう。あらためて、向学心、向上心の高い、恵まれた奥様だったのだなぁと思う。お孫さんには恵まれなかったけど、二人の優秀なお子さんを育てられて、そして自然を愛でて、沢山学んで、そして、逝かれた。お孫さんがおられたら、息子さんが近くに住んでおられたら、妹さんがロスにお嫁にいかれず地元におられたら、今も元気でおられたかも?とも思わないでもないけれど、それぞれの人の、それぞれの自由度の中での選択があって、そしてそれにより受け取るものが決まっているのだろう。

Mさん(ご主人)からも、使わなくなった方眼紙や未使用のノートやクリアファイルなどゴッソリ頂く。ご自身が読みやすく編集された手引書(「赤外吸収スペクトル法要説」)なんていうものも一寸面白そうだったので頂いた。聞けば学生の為に多くの資料からまとめられて自費出版されたものだとか。Mさんの学生への想いを感じるような気がした。

奥様のお洋服もまた沢山頂いた。帰る時には毛糸とお洋服で段ボール箱が一杯になっていた。ウールのものが多いけれど、どれも状態がよいので多分タンスにしまわれていたものだと思う。Mさん手編みのウールのピンクのスカートや、以前お絵かき教室に着て来られていた服もあった。見るたびに『生きておられたら…』と思うけれど、そう何度も思うけれど、もうこの世でMさん(奥さん)に会える事はもうない。今更ながらそのことが残念で仕方がない。

家に帰ってお洋服に袖を通してみると、微かにMさんの匂いがした。淡く優しい匂い。気分も少し上がって、私自身は全くマダムでもなんでもないけど一寸マダムな気分。Mさん、何処かで見ておられるだろうか?『Mさん、私、これ、似合ってますか?』

前に来た時遠慮して置いて帰ったレンガ色の手編みのショールも結局私が持ち帰ることになり、帰り間際に肩に羽織った。「似合いますかねぇ?」と私が訊くと、Mさんが「うん、似合います。」と言って下さった。確かにショールは思いのほか似合っているみたいで、そして、なにより、温かかった。

Mさん(ご主人&麗子さん)、あの世に行くまでに、もう少し学びを重ねて、人の為にも自分の為にも尽くしていけるようにと願っています。これからも見守っていて下さい。