回転ずし屋と岩屋山

とても久しぶりに近くのスーパーの回転ずし屋さんに入った。何年ぶりだろか?一番好きだった人と行った所には、想い出すのが嫌で行かなかった。行けなかった。

その行けなかった回転ずし屋さんにMさんが誘って下さった。

新しい想い出が、辛い記憶の上にかぶさっていく。遠い想い出に、すこし挨拶する。『大丈夫?。うん、大丈夫みたいだね。』

悲しみを共有している者同士で席に座る。少し遠慮気味に注文して、食べながらお話をする。

「奥様と一度一緒に来た事があるんですよ。老舗のお寿司屋さんではなく、回転ずし屋さんになんて誘うのは、如何かなぁ?と思いつつお誘いしたんです。」私がそう言うと、「そうですかぁ、」とご主人が知る以外の時間が私との中にあったことを意外に思われたようだった。
「奥様が、卵を取られたのをよく覚えています」というと、「ああ、卵が好きでしたからね」と遠い日を想い出され、寂しさをこらえつつもすこしMさんが笑顔を見せて下さった。卵の話をしつつ、そしてMさんの注されるお醤油の量の多さにちょっとびっくりしつつ、ゆっくり少しずつ食事をした。

帰りに秋穂のお遍路さんの札所の1つである岩屋山の桜を見に行った。ウコン桜を見たかったのだけれど、まだ咲いていなかった。でも、「近場にこんな場所があるとは知らなかった」としだれ桜や祭られている巨石をみながらMさんが喜んで下さったので、来てよかったと思った。「また石楠花の頃に来ましょう。」と言って岩屋山を後にした。

細い川沿いの路地を車で走りながら、「私はもしかしたら、Mさん看取る事になるのかなぁ」とそんな事を思ったりもする。血縁は無いし、お家の縁故者でもない。傍から見ればきっと奇妙な二人に見えると思う。でも、縁あって偶々側にいるのだから、そして偶然は必然だからこれで多分いいのだと思う。まず身近にある者同士で救われていこうと思う。