雪景色の日

雪が降る日は、辺りが静かで、冷たい空気が心を遠くまで連れて行ってくれる。耳が澄んで、いつしか心は内側を向いている。
家に居ると、時間が静かで、家にいることが、何となく幸せで、ミルクティーが美味しい。
でもいつもと違う美しい風景があるのだろうと思うと、外にちょっと出たくなったりもする。

今日もラジオを聴いていたら、「博士の愛した数式」の著者である小川洋子さんの番組で北杜夫氏の「夜と霧の隅で」という本の紹介をしていた。
タイトルは知っているけれど読んだ事はなく、これがナチスを扱ったもので、精神病患者や精神科医などが登場するものだということを始めて知った。意外な気がしたのは、それが日本の文学でありながら、舞台が海外であるということが大きいかもしれない。それから今では精神病という言葉は身近にあってそれが現代病の一つのように思っている節が私にはあるけれど、そのような患者は前の大戦の際にもあったということ。
考えてみれば、ロダンの愛人のカミーユ・クローデルもしかりで、40代でロダンに捨てられて50歳以降精神病院で暮らした。
ほとんど小説は読まない私ではあるし、今後「夜と霧の隅で」を読む確率は低いけれど、マイナーな世界の事を知ることは、とても大切な事であると、心に刻んでおきたい。
人知れず、隠されて、閉ざされた世界。でも繋がっている世界。心の温度を合わせて静かに聴けば、何か美しいものも、もしかしたら聴こえてくるかもしれない。