ETV特集 〜獄中28年間の対話〜

永山則夫。生前、母がとても気にしていた人。
獄中から、朝日新聞に時々投稿されていた方。その投稿の記事を母はずっと気にして読んでいた。
投稿が途切れると死刑が執行されたのだろうかと心配し、また投稿された記事を発見すると少し安堵していた。

人を殺したということは確かにそれはいけないこと。でも人を殺すのはいけないと百も承知の上で、ここまで改心した人を処刑する権利があるのだろうか?
ずっとそんなことを母は言っていた。

私も死刑は反対。改心が難しい人であっても、極刑にはせず、本人は生きて学ぶべき。被害者が極刑を望む事は多々あり、今も日本には死刑という刑罰がある。
きっと私ももし被害者になったら、「犯人はいなくなっちゃえ(死んじゃえ)!」って思うだろうと思う。まるでそれを思わないでいられると断言できるかどうか。でも多分、求刑者側が犯罪者の死刑をもって、その後ずっとすっきりし、それなりに幸せに生きていけるのかどうか疑問に思う。
いずれにせよ悩めるのだろうけれど、それでも、すっかり改心してくれたんだ、とそう信じつづけたい。

偶々今日まで人を殺さずに生きてくることができた。
人は一人追い詰められた時、人でなくなる。犯罪を犯すこともある存在。

処刑されたことを、処刑後多分少し経ってから知った母は、数日間沈んでいた。
処刑後はもう永山被告のことを殆ど話す事もなかった。

1997年に死刑が執行されてから、もう10年以上が過ぎているのに、こうして今NHKが番組を企画しているあたり、やはり永山被告の事は多くの人の心に残っていたのだと思う。
今、時代も時代で、自殺者も犯罪者も増えている。
何処に問題があるのか。個人だけの所為にして終われる問題なのか。

どんな人も、生きていてほしい。人や自然と共に。