心置き去りのスーパー

スーパーの一角で働きはじめて3年半。ここ1か月位同じスーパーで働いているMTさんの姿をみることがなくなって、どうされたのか少し気になっていた。仕事帰りにMさんと同期入社だと言われていた女性とすれ違ったので声をかけてみた。訊けば辞められたとのこと。店長さんに新人教育が悪いと言われたことが発端であるとか。入院されたのだろうかと思ったら辞められたときいて、少し寂しい気分。ニコニコいつも笑顔がよくて仕事の出来る人というのが私の印象だった。

MTさんは元々は関西の方で仕事をしておられたそうだけれど、親の面倒をみなくてはならなくなって地元に戻って来られたらしかった。家から近くに出来たばかりのスーパーにパートで就職。田舎は仕事が少ないし高齢になってくるほど仕事はない。親のことを考えれば家から近くで働ければ現実的に考えれば条件など言っておられなかっただろうと思う。本来の出勤時間よりも1時間位早く出社されていたようだけれど、後できいた話から察するに担当しないといけない仕事がとても多くおありだった模様。

Mさんは親の面倒をみなくてはならず、パートの身分ではあるし、結婚は遠のきがちだったろうと思う。その親御さんも一年ちょっと前に他界され一人になられた。本来なら誰かがそばで見守るべき立場にあっても、安さを売りにしているスーパーの仕事は日々多忙で、そして何かにつけて理不尽。限度も感情もある生命としての人間の部分は軽視され、次々と人は辞めていく。MTさんも苦しさ辛さを抱えておられたと思う。それでも親を観ないといけないという心が今まではスーパーの仕事に踏みとどまらせたと思う。本来なら一人になられて誰かに見守られないといけないような立場なのに、そんな立場などこれまた忙しくて解さない店長からのたぶんキツイ言葉。有給休暇も沢山あっても勤務された10数年の間まるでとっておられなかったらしいし、有休消化でもらえる給与ももらわず退社されたらしい。そして残った社員の人達は、仕事が増え、Mさんの文句を言い出すというそういう環境。それが安売りスーパー。

セロテープを借りにこられた時などに、Mさんそろそろ結婚を考えた方がいいですよ、と世話やき婆になって何度か声をかけた。働き者のMTさんだから、もし結婚されたら奥さんは沢山手伝って貰えると思うのだけれど。

親御さんは亡くなられる前1〜2年ほど施設に入られ、入居されてからはときどき花苗を買って下さっていた。初夏の頃アジサイもいくつか買われた。ピンクに白いふちどりのアジサイなどはMTさんにとても似合っていた。来年あじさいが咲くころには消耗した心がもとに戻っていて下さるといいなと思う。これからも頑張ってね!ね、トシオちゃ〜〜ん!